SS NEWS(令和6年4月)~マイナス金利の解除~
■ マイナス金利解除で借入金利は上がる? ■
日銀がマイナス金利政策を解除したことが大きく報道されました。最近、お客様から「今後、会社の借入金利はどのくらい上昇しますか?」というご質問を受けます。そこで、借入金利の動向についてお伝えしようと思いますが、金利動向のご説明には「金利」についての基礎知識が必要ですので、少しお付き合いください。
金利には「名目」金利と「実質」金利があります。「名目」金利は表面上の金利(表示されている金利)です。一方、「実質」金利は名目金利から物価上昇率を控除した数値で、「実質金利=名目金利-物価上昇率(インフレ率)」となります。
日銀のマイナス金利は「名目」金利のことで、物価上昇率がマイナスのデフレ期は「名目金利がマイナスでも物価上昇率はそれ以上のマイナスなので、実質金利はプラス」でした。一方、物価上昇率がプラスなのに名目金利がマイナスだと実質金利がマイナスになり、「バブル経済」を誘発してしまいます。(実質金利がマイナスなら、貯金より借入れの方がお得)。
つまり、今回のマイナス金利解除は、「現在は物価上昇率がマイナスからプラスに転じている時期なので、実質金利がマイナスにならないように名目金利を上げることにした」という意味になります。したがって、「この先どのくらい借入金利が上がるかは、物価上昇率の動向しだい」です。
また、日銀は基本的には金利を「上げる」ことを考えています。日銀の役割の一つは金利水準の調整ですが、マイナス金利だと「調整しようがない」からです。ということは、借入金利は上がっていくという「心の準備」と、物価上昇率を「注視する」ことが必要です。(とはいえ、他の要素も影響するので教科書通りには進まないかもしれません。)「この会社は金利動向に注意が必要」という例を挙げるなら、「借入金残高」が「経常利益の10年分」より大きい会社です。借入金利の上昇が損益・資金繰りに与える影響が大きくなると予想されます。
「経常利益10年分より大きい」会社は、「借入金利が仮に0.5%アップしたら利益はどの程度減るか?」「1年後の預金残高はどうか?」などの「心の準備」が必要です。準備のお手伝いをしますので、弊社担当者に是非ご相談ください。
■ 大手企業は「満額回答」だけれども・・・ ■
マイナス金利解除と同時期に大きく報道されたのが、大手企業の春闘での「満額回答」です。テレビや新聞で連呼されると「当社も賃上げしないと・・・」と圧力を感じた経営者の方も多いと思います。
政府の主張は「物価が上昇しているのだから物価上昇を上回る賃上げをしてください」ですが、物価上昇には「良い物価上昇」と「良いとは言えない物価上昇」の2種類あると言われております。良い物価上昇は「需要けん引インフレ(ディマンドプルインフレ)」、良いとは言えない物価上昇は「原価上昇インフレ(コストアップインフレ)」です。
良い物価上昇の「需要けん引インフレ」は、景気そのものがよくなり、(コストでなく)需要が増えることでモノの価格(物価)が上がる好循環の状況をさします。販売単価が上がり、販売数量も増加し、景気が良くなっている実感があります。そうなると、「賃上げする余力」も生まれます。
一方、今の日本は「原価上昇インフレ」です。周知の通り、コロナ禍やウクライナ紛争等の要因が重なり、モノやサービスの供給不足等のため資源価格を中心に物価が上昇しております。「景気が良くなった実感がないのに価格が上がっている」状況です。さらに、前述の通り「借入金利上昇による金利負担の増加」にも備えなければなりません。
そんな中、大手企業の春闘では「満額回答」が並び、大きく報道されました。中小企業経営にとって、従業員の賃上げは非常に悩ましい問題です。
■ 賃上げするには? ■
賃上げのためにはその原資となる「利益」が必要です。利益確保のために最初にやるべきことは、もちろん「経費削減」です。その次は「仕入先・外注先等との価格交渉」あるいは「取引先の見直し」です。「それらは既にやり尽くした。でも、思うように利益が確保できない」なら、最後の手段は、「販売価格の値上げ」です。
「値上げは難しい、できない・・・」と躊躇するお気持ちは十分に分かります。が、「値上げ以外に選択肢がない」としたら、取り組まないと会社の未来が危なくなります。
コロナ禍の数年前に飲食業界で「鳥貴族ショック」という言葉が駆け巡りました。「全品280円均一」から298円に約6%の値上げを実施したところ、なんと10か月連続で既存店客数が下がり続けました。消費者の過敏な反応は飲食店での値上げがどれほど怖いものかと同業者を震撼させ、「鳥貴族ショック」と話題になりました。その後、コロナ禍が続く2022年に鳥貴族は319円へさらなる値上げに踏み切りました。その結果、どうなったか・・・。2023年7月期決算の営業利益はコロナ前を上回っております。鳥貴族の経営陣は値上げの決断に迷いに迷ったことと思いますが、勇気ある決断が会社を救い、従業員を守りました。
値上げは怖いです。ただ、全ての製品、全ての得意先で値上げをする必要はないかもしれません。
「どの製品なら値上げできるか?」「どの得意先なら値上げできるか?」ということから検討を始めてみるのはどうでしょうか?原価上昇インフレなので、コストはますます上がり続けます。
「マイナス金利解除」と「満額回答」が大きく報道されている今が検討のタイミングだと感じます。
2024.4.10 サクセスサポートニュース(令和6年4月)
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