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SS NEWS(令和5年9月)~不動産を購入した場合の土地と建物の金額~


【 いよいよインボイス制度始まります 】

 令和5年10月1日開始日まで残り1ヵ月を切りました。インボイス登録をされた方は先月のサクセスニュースでご案内しましたチェックリストを是非ご利用していただき、「ファイナルチェック」を「必ず」実施していただきますよう、よろしくお願いいたします。


【 不動産を購入した場合の土地と建物の金額の内訳について 】

 昨今の不動産価格の高騰の影響なのか、日々の業務で不動産売買契約書を確認する機会が増えつつある気がします。
 土地と建物を一括で売買するときに、売買契約書には、一般的にその内訳が記載されます。
 例えば、物件の価額が1億円の場合には「土地の代金 7,000 万円、建物の代金 3,000万円(消費税込)」という感じです。
 また「譲渡代金1億円(内消費税額 2,727,272 円)」という記載も見かけます。この場合には建物の金額が明記されていませんが、消費税法上は土地の売買には消費税は課されず、建物の売買にのみ消費税が課されることから、消費税額から建物代金を計算することができます。
 一方で、売主が個人の場合で自宅を売る時は、その個人は「譲渡代金の総額」が重要であり「土地と建物の内訳」については気にする必要はありませんので、この場合の契約書には「譲渡代金1億円」とだけ記載されることがよくあります。
 売主の個人は、利益が出ていれば確定申告さえすれば、税務上はこのような契約書で全く問題ありません。


【 土地と建物の金額が不明の場合に困るのは「購入者」 】

 購入者が「購入物件を賃貸する」あるいは「購入物件を利用して事業を開始する」等の場合には、建物部分については「減価償却費」を算出して、その減価償却費相当額を費用として計上することになります。
 減価償却費は建物の購入代金を基に計算することになりますから、建物の金額が大きければ大きいほど、減価償却費をより多く計上することができ、結果として納税額が減少します。
 減価償却費を計上する必要があることから、売買契約書に土地と建物の金額の内訳の記載が無い場合には「購入者側が合理的に区分」することになります。
 実務上は「固定資産税評価額の割合で按分する方法」が一般的です。固定資産税按分を否認した事例があるようです。中古物件で建物の築年数が相当経過している場合には、建物の固定資産税評価額が極端に低く、結果的に「購入代金のほとんどが土地」となり、減価償却費があまり計上できないという残念な結果となります。
 そこで、「総額は変更せずに、あらかじめ建物の金額を高めに記載して売買契約を締結しよう」と考えた人がいました。前述の通り、売主が個人であれば、その内訳は基本的には気にしませんので、売買契約は締結できてしまいます。
 親族間取引であれば「論外」ですが、第三者間の取引で、その売買契約書に土地と建物の金額の内訳が明記されているのであれば、その契約書に記載された金額で問題はないのでしょうか??
 答えは「問題あり」です。納税者が負けた国税不服審判所の裁決事例がありますのでご紹介します。


【 令和4年9月9日裁決の概要 】

 個人甲は3つの不動産を購入した。売買契約書に記載された金額は次の通りであり、この建物代金を基に減価償却費を計上し所得税の申告を行った。
・総額 3 億 500 万円 内訳・・・土地 9,150 万円(30%) 建物 2 億 1,350 万円(70%)
・総額 3,100 万円 内訳・・・土地 930 万円(30%) 建物 2,170 万円(70%)
・総額 1,950 万円 内訳・・・土地 585 万円(30%) 建物 1,365 万円(70%)

 国税不服審判所の判断
・各建物は契約時点でそれぞれ、築 27 年、築 40 年、築 38 年が経過しており、設備等が破損する等いずれも老朽化していた。
・各物件に係る固定資産税評価額はいずれも建物価額が土地価額を大きく下回っていた。
・各建物の築年数や構造等が異なるにもかかわらず、土地と建物の比率は「一律3対7」
・各物件の売主は物件総額のみを重視しており、金額の内訳は気にも留めていなかった。
・一般的に固定資産税評価額は、土地建物につき適正な時価を反映しているものであるから、土地建物の金額の区分について、固定資産税評価額比の割合に基づき算定することが合理的な方法である。

 以上のことから「契約書に記載された土地と建物の金額は著しく不合理なものであり、本件においては合理的な基準である固定資産税評価額比の割合により按分して算定すべきである」と結論付けられました。


【 最後に 】

 この裁決事例は客観的に見ても「やり過ぎ」です。著しく不合理なことは明らかです。
 では、築年数は相当経過しているものの「メンテナンスが行き届いている」とか「内装についてはリノベーションしたばかりである」や「譲渡直前に外装については大規模修繕したばかりである」といった場合はどうでしょうか。
 「メンテナンスの程度や内外装の状態」は固定資産税評価額に「反映されていない」場合が多いです。その一方で物件価額には「上乗せされている」場合が多いと思いますので、その場合には固定資産税評価額の割合をベースに、一定の金額を「建物部分に上乗せ」したほうが合理的と言えるかもしれません。その結果、より多くの減価償却費が計上できることになります。
 物件の状態は千差万別ですので、売買契約書に土地建物の金額の内訳が明記されていない場合には、固定資産税評価額の割合をベースに、上記の様な「建物にプラス要素」があるのであれば、その状況を勘案した、より合理的な方法で土地と建物の金額を区分して、適切な取得価格を算定することにいたしましょう。

2023.9.15 サクセスサポートニュース(令和5年9月)