SS NEWS(令和5年7月)~ゴルフ会員権~
ゴルフ会員権(以下、「会員権」と言います。)を法人所有として、会社の貸借対照表に計上されている場合に、処分等により法人税法上の損金にする場合においての、注目の地裁判決が出されました。
敗訴した会社側は控訴中で判決が確定したわけではありませんが、会社所有の会員権について、権利関係を再確認しておく必要があると考えられますので、お伝えいたします。
個人所有の会員権の譲渡損は、所得税計算上、以前は他の所得との損益通算が可能でしたが、現在は認められません。しかし売却益が出た場合には、総合譲渡として課税対象になっています。
他方、法人所有の会員権の譲渡損は、その譲渡した日の属する事業年度において損金の額に算入することとされています。譲渡を認めていないゴルフクラブの脱退によって生ずる脱退損失についても同じです。
これに対して今回の判決は、預託金制会員権で、過去に民事再生法に基づく再生手続において預託金の一部カットによる債務免除があり、その後しばらくして、カットされなかった部分の預託金を返還請求により受領した後、退会手続完了により、会員権償還損として損金に計上したところ、税務調査で、過去の再生計画で認可決定の確定によりカットされた預託金は、その時点で金銭債権の貸倒損失として損金に算入する必要があったとして否認されたため、会社側が裁判に持ち込みましたが、裁判所は国(税務側)の主張を認め、請求を棄却したものです。
地裁の棄却理由の説明はここでは省略しますが、過去に民事再生法による預託金カットがあった会員権は相当数あり、その処分時に損金処理できないとなると、多額の損失が税務上無駄になってしまいます。それを避けるために、会社所有の会員権について、預託金制か株式会員制か、預託金制の場合に過去に民事再生法による再建があったか、また倒産により経営権の移動があったかどうかなど、権利関係を再確認しておく必要があるでしょう。
また売却か退会かによっても上記のとおり税務処理が異なってきますので、注意が必要です。会員権の処分を検討される際には、弊社担当者に事前にご相談ください。
2023.7.13 サクセスサポートニュース(令和5年7月)