SS NEWS(令和5年12月)~130万円の壁~
今月は、最近ご質問を受けることが増えてきたこの話題についてお伝えいたします。
「130万円の壁」です。
【130万円の壁】
パート従業員等の方は、年収130万円以上になると社会保険料の支払いが発生し、手取額が減ってしまいます(従業員総数100人以下の会社のパート従業員等の場合)。
年収の境目が130万円なので「130万円の壁」といわれます。例えば、年収135万円と年収125万円を比べると、収入こそ10万円増えますが、手取額は逆に「少なく」なります。なぜかというと、年収125万円なら社会保険料負担がゼロですが、年収135万円は社会保険料負担が生じるためです。
内閣府の試算によると、130万円の壁を超えないように就業時間を調整している人は約265万人との推計です。一方で、失業率の歴史的な低水準が続く中でも慢性的な人手不足となっており、それが成長の制約になるとの懸念から、政府が「130万円の壁」の是正に一歩踏み出しました。
それが「年収の壁・支援パッケージ」です。
【年収の壁・支援パッケージとは】
「パート等で働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより収入が一時的に上がって130万円以上となったとしても、事業主が一時的である旨を証明することで、連続2回までなら引き続き配偶者の扶養に入り続けることが可能となる」という特例措置です。
なお、令和7年に予定する5年に1度の年金制度改正までのつなぎ措置となります。
【具体的には?】
(1)どのように対応するのでしょうか?
→ 貴社のパート従業員(例えば「妻A」)とその配偶者(例えば「夫B」)、という設例でご説明します。
夫Bの会社が加入する健保組合等から夫Bに対して、「夫Bの配偶者(妻A)の年収」の照会が定期的にあります。妻Aの年収が130万円以上の場合は、原則として、妻Aは夫Bの社会保険上の扶養となれず、妻A自身が社会保険料を負担する必要があります。
そこで、今回の特例措置では「妻Aの収入が130万円以上なのは一時的である」という証明書を「妻Aの勤務先」が「妻A」に交付し、その証明書を夫B経由で夫Bの会社が加入する健康保険組合等に提出することで、引き続き妻Aは夫Bの扶養になることができるという仕組みです。
証明書交付の流れは次の通りです。
「妻Aの勤務先」→「妻A」→「夫B」→「夫Bの勤務先」→「夫Bの勤務先が加入する健康保険組合等」
ただし、妻Aが夫Bの扶養となれるか否かを判定するのは夫Bの会社が加入する健康保険組合等なので、この証明書を提出したとしても扶養となれない可能性があるようです。
「証明書を交付すれば必ず扶養になれる」という仕組みではありませんのでご注意ください。
また、証明書の交付を受けるパート従業員等にもその旨をよくご説明ください。
(2)「連続2回」とは「2年」という意味でしょうか?
→ 各健康保険組合等による収入確認が「年1回」行われることを想定して「連続2回」と規定されております。つまり「連続する2年間の各年の収入確認において証明書を用いる」という整理となります。
(3)「一時的な収入変動」と認められる上限額はいくらでしょうか?
→ 厚生労働省によると「具体的な金額を示すことは困難」とした上で、「各健保組合等において雇用契約書等を踏まえつつ一時的なものかどうかを確認していただくことになる」との説明です。また、一時的な収入増加の要因としては「時間外手当・残業手当」や「臨時的に支払われる繁忙手当等」が該当するとしております。
一方で、基本給が上がった場合や恒常的な新たな手当が支給されることとなった場合など、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合は「一時的」とは認められないので注意が必要です。雇用契約書や労働条件通知書などで計算した年間収入見込額が130万円以上となる場合は、今回の特例措置の対象外となります。
(4)「一時的な収入の変動」であることをどのように証明すればいいでしょうか?
→ 厚生労働省のサイトでダウンロードできます。
(5)今回の措置はいつから開始されますか?
→ 令和5年10月20日以降の健保組合等による被扶養者の収入確認から適用されます。
2023.12.7 サクセスサポートニュース(令和5年12月)