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SS NEWS(令和4年6月)~不動産評価方法の最高裁判決~


■ 不動産評価方法の最高裁判決が下されました ■

 以前のサクセスニュースでもお伝えしました、不動産の評価方法をめぐる納税者と国の裁判について、令和4年4月19日に「納税者側の路線価に基づく不動産の評価が著しく不適当として、国側の鑑定評価を採用すべき」という判決が最高裁判所で下されました。1審、2審ともに国側が勝訴し、最高裁までもつれた結果、国側の勝訴が確定しました。最高裁判決の内容は、路線価評価の仕組みが違法ということではありませんが、今後相続税対策を進める上で、少なからず影響を及ぼす重要な判決と言えますので、再度ご紹介いたします。


■ 案件の概要と裁判官の判断 ■

【案件の概要】
○ H20.8・・・・・甲は孫乙と養子縁組。
○ H21.1・・・・・甲は銀行借入で不動産Aを購入。購入金額は8.3億円。この不動産について土地は路線価評価、建物を固定資産税評価(以下、通達評価といいます)に基づくと2億円。甲の年齢は90歳。
○ H21.12・・・・甲は銀行借入で不動産Bを購入。購入金額はおよそ5.5億円。この不動産について通達評価は1.3億円。
○ H24.6・・・・・甲が死亡。乙は不動産A、Bと借入金を承継、「相続税0円」として相続税を申告した。
○ H25.3・・・・・乙はB不動産を5.1億円で譲渡。
○ H28.4・・・・・税務署から「評価通達6項(※)」にもとづき以下「不動産鑑定士による評価額」による相続税の追徴課税およそ3億円の更正処分を受ける。

A不動産・・・・7.5億円
B不動産・・・・5.2億円

※通達評価額が著しく不適当な財産の評価については、「国税庁長官の指示により評価する」というもので、税理士業界では「伝家の宝刀」と言われております。

【裁判所の判断の要旨】
○ 各不動産の「不動産鑑定による評価額」と「通達評価額」に相当の乖離がある。
○ 甲は90~91歳と高齢にもかかわらず、多額の借入をして不動産を購入した。
○ 各不動産の購入(相続税の節税対策)がなければ相続財産は6億円超だった。
○ 銀行の稟議書には、「甲の相続税減額のため実行」と記載されていた。
○ 以上を勘案すると、「本件において相続人らの行った行為は相続税の負担が著しく軽減されることになり、また、相続人らはそれを知り、かつ、その期待をして本件借入・購入を実行したことは、租税負担の軽減をも意図して行ったと言える」とし、本件において「通達評価額」は他の納税者と著しく不公平と判断し、税務署の更正処分通り評価通達6項による「鑑定評価額」を認めた。


■ 今後の影響は・・・?? ■

 本件は業界関係者の間で非常に注目されていた裁判でしたので、日本経済新聞の朝刊1面でもとりあげられました。判決が出た今、インターネットで検索しますと有識者の方々の解説や見解が数多く公開されています。その中で本件の問題点として、『総則6項による「著しく不適当」の基準が明確にならなかった』点が挙げられています。路線価評価が著しく不適当な場合が、最高裁判決で明らかになると今後の相続税対策を進める上での指針になるのですが、残念ながら不明確なままでした。
 私見ではありますが、国税側が「伝家の宝刀を抜いたポイント」は大きく以下の4点と思います。本件の様に指摘されないための対策も合わせてご紹介します。

① 相続直前の対策
→90歳を迎えてから派手に相続対策を行い、その結果、相続税は0円になりました。

 どうみても短期間で対策を「やり過ぎ」です。
 一般的に相続税は高額になりがちです。本件のような指摘をされないためにも、また節税の観点からも、重要なことは「早いうちに対策に着手」することです。
 相続対策に時間をかければかけるほど、節税の効果が大きくなります。「暦年贈与課税の廃止」も囁かれています。相続対策が必要な方は早め早めの対策着手をお願いいたします。

② 相続開始直後の売却
→「相続対策の一環」として購入した不動産を、相続直後に売却するのはおススメできません。

 本件のような指摘をされないためには「相続後5年程度は保有」した後に、売却をすれば指摘されるリスクは下がると思います。

③ 銀行の融資目的
→「90歳の高齢者に多額の融資を実行する銀行もおかしい」と思いますが、本件では銀行の稟議書に「節税目的の融資」と明記されていました。

 融資を受ける目的として「高利回り物件を購入したい」とか「立地がいいので購入したい」など、節税以外の目的を明確にしておくことが重要です。

④ 取得価額と路線価に基づく評価額との乖離
→本件では「その差が4倍」もありました。

 本件の様に「その差」が大きい場合には、路線価に基づく評価が、最高裁が指摘した「他の納税者と比較して著しく不公平」にならないかどうかを、今一度冷静に検討することが重要です。

今後もサクセスサポートでは、お客様の実情に合わせた適切な節税をして、適切な申告納税を提案して参ります。
繰り返しになりますが、「相続対策は早めの着手」が最も重要です。今回の記事で不安やお迷いのことがありましたら、どうぞお気軽に弊社担当にお問い合わせください。

2022.6.10 サクセスサポートニュース(令和4年6月)