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SS NEWS(令和4年12月)~「扶養から外れてしまうので12月は休ませて下さい」~


 これから年末にかけて多くの中小企業で起こるのが、パート社員の「扶養から外れてしまうので12月は休ませてください」という問題です。報道によると大手小売業(スーパーなど)でもこの問題に悩まされているようです。パート社員さんにお話を聞いてみると、ここ数年の改正で複雑さが増しているため制度の理解が追い付かず、「103万円の壁」だけがなんとなく記憶に残っているというケースが少なからずあるようです。

 そこで、今回は「ご主人の扶養の範囲で働きたい妻」に焦点をあてて扶養の問題を考えていきます。問題になるのは「収入の壁」です。次の3つがあります。

 ① 妻に「住民」税がかかる、という「壁」
 ② 妻に「所得」税がかかる、という「壁」
 ③ 妻に「社会保険料」がかかる、という「壁」(妻の社会保険料免除がなくなる)
 (夫の会社が支給する配偶者「手当」(妻の扶養手当)の検討は割愛します)

 以下、1つずつ解説していきます。


■1つ目の壁・・・妻に「住民」税がかかる■

 1つ目は住民税です。(地方税、県市民税などと表現される場合もあります)最初に結論を申し上げると、「住民税は非課税枠を上回った分だけにかかるので税負担が重くない」ため「住民税の非課税枠の範囲内で」と考える方は少数派です。

(1)『パート収入が年間いくらまでなら、妻自身に住民税がからないのか?』(いわゆる「非課税枠」)
 一般的には「100万円まで住民税非課税」と言われますが、正確には違います。
 実は、お住まいの市区町村の「級地」区分により「非課税枠」は次の3つに分類されます。

①1級地 100万円以下 (東京23区、東京都の多くの市、川口市、さいたま市、千葉市、松戸市など)
②2級地 96.5万円以下 (川越市、越谷市、柏市、流山市など)
③3級地 93万円以下 (多くの町村)
(「級地」区分は生活保護法に基づく分類です)

(2)『「非課税枠」を超えた場合の住民税の金額はいくら?』
 非課税枠を超えると「所得割」「均等割」という2種類の税金がかかります。
 算式で示すと、住民税額=所得割+均等割 となります。
 1) 所得割は「非課税枠を上回った金額」×10%
 2) 均等割は「5,000円(令和6年分から4,000円)」

 例えば、パート収入が年間120万円の場合の住民税の税額は、
 住民税額=(120万円‐100万円)×10%+5,000円=25,000円(1級地に居住の場合)
 (税金計算の時に100万円を引けるところがミソ)
 
 ただし、市町村ごとに一定の範囲内で「増減」させることが可能なので、「所得割が10%以上」や「均等割が5,000円以上」の市町村が存在します。したがって、住民税額を正確に計算するには「お住まいの市町村の所得割の税率、均等割の金額を正確に調べる」ことが必要になります。概算額で差し支えない場合は、10%と5,000円を使っていただければ問題ございません。


■2つ目の壁・・・妻に「所得」税がかかる■

 2つ目は所得税です。こちらも最初に結論を申し上げると、「所得税は住民税と同様に非課税枠を上回った分だけにかかるので税負担が重くない」ため「所得税の非課税枠の範囲内で」と考える方は少数派です。

(1)『パート収入が年間いくらまでなら、妻自身に所得税がからないのか?』(いわゆる「非課税枠」)
 103万円以下であれば、所得税はかかりません。(所得税は国税なので地域差はありません)

(2)『「非課税枠」を超えた場合の所得税の金額はいくら?』
 非課税枠を超えると5%(年収300万円くらいまでなら)の税金がかかります。(「復興所得税」については割愛させていただきます。)

 例えば、パート収入が年間120万円の場合の所得税の税額は、
 所得税額=(120万円‐103万円)×5%=8,500円
 (税金計算の時に103万円を引けるところがミソ)


■3つ目の壁・・・妻に「社会保険料」がかかる■

 3つ目は社会保険料です。(健康保険料、介護保険料(40歳以上が負担)、厚生年金保険料)。結論は、この壁が「最も高い壁」です。そして、パート社員のほとんどの方が、この壁を超えない範囲で働いております。理由は明白で、「手取額が大きく減る」からです。

(1)『パート収入がいくらまでなら、妻自身に社会保険料がからないのか?』(いわゆる「非課税枠」)
 ①「妻の会社」の従業員総数が100人以下の場合・・・年間130万円未満
 ②「妻の会社」の従業員総数が101人以上の場合・・・年間106万円未満

(2)『「非課税枠」を超えた場合の社会保険料の金額はいくら?』
 ①妻が40歳未満の場合・・・おおよそ14%(会社側も別途14%を負担)
 ②妻が40歳以上の場合・・・おおよそ15%(会社側も別途15%を負担)

 次の計算例で比べてみましょう。(妻の会社は100人以下で、妻は40歳以上とします)

計算例(1)
・パート収入が年間130万円ちょうど(非課税枠オーバー)の場合の社会保険料の金額
・社会保険料=130万円×15%=195,000円

計算例(2)
・パート収入が年間129万円(非課税枠の範囲内)の場合の社会保険料の金額
・社会保険料=0円

 2つの計算例は、パート収入の差は年間「1万円」ですが、社会保険料の差は「19.5万円」です。
 所得税、住民税は非課税枠を超えた分「のみ」にかかりましたが(100万円や103万円を引いて計算しました)、社会保険料は給与「全額」にかかるので負担額が大きくなります。
  
 別の視点で、さらに2つの計算例を比べてみましょう。(妻の会社は100人以下、妻は40歳以上)

計算例(3)
・パート収入年間150万円の時の社会保険料を引いた手取額(所得税・住民税控除前)
・150万円‐(150万円×15%)=150万円‐22.5万円=127.5万円

計算例(4)
・パート収入年間129万円の時の手取額(所得税・住民税控除前)
・129万円‐0円(社会保険料非課税)=129万円

 つまり、『年間150万円働いても、手取額は年間129万円の場合より少なくなる』ということになります。これが、世間でいう「130万円の壁」です。

 採用が困難を極める中、パート社員の戦力はとても貴重です。一方、あらゆるモノの値段が上がる中、扶養の範囲で少しでも家計を助けたい方が大勢います。
 会社側とパート社員でミスマッチが起こらないよう、正しい知識を共有していただけたらと存じます。いくつか割愛した部分もございますので、詳細は弊社担当者にお尋ねください。

2022.12.10 サクセスサポートニュース(令和4年12月)