SS NEWS(令和3年8月)~贈与をご計画ならお早めに~
相続税・贈与税をめぐる環境に大きな変化が起こるかもしれません。
というのは、昨年末の税制改正大綱で「相続税と贈与税の一体化」が打ち出されたからです。これは、資産化のみならず税の専門家にとって衝撃的な内容でした。なぜなら、一体化が行われると、年間110万円まで非課税だった生前贈与(暦年課税)が認められなくなる可能性があるからです。(贈与税の実質的な廃止)
贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの制度があります。
1つ目の「暦年課税」は、暦の1年ごとに贈与額を集計して贈与税を計算する制度です。
年間110万円までなら非課税となるため、長期にわたり贈与を行うことで将来の相続税を減らせます。そのため、毎年コツコツと長期にわたり生前贈与することは相続税節税の「王道」と言われてきました。「一体化」によりこの「王道」が封じられるかもしれないので、衝撃的なのです。
2つ目の「相続時精算課税」は、文字通り「(贈与時でなく)相続時に(税金を)精算」する制度です。
具体的には、贈与した時は2,500万円まで非課税ですが(2,500万円を超えると超えた部分に対して20%が課税)、相続の時は贈与時の非課税分を持ち戻して精算し相続財産を算定する仕組みです。贈与した時に納税がなくても(非課税枠におさまっても)、相続の時に納税が必要なので「納税の先送り」制度です。なお、価格(価値・評価額)が上昇傾向にある財産なら、相続時の時価でなく、贈与した時の低い評価額への課税で済むというメリットがあります。
税制の仕組みを事実上決めている自民党税制調査会の会長である甘利明氏は、相続税・贈与税等のあり方を「国際標準にそろえる必要がある。資産がある人にとって利用価値が高い制度は是正しないといけない」と強調しております。甘利氏のいう「国際標準」をみると、米国・ドイツ・フランスなどは相続税と贈与税を統合した体系になっており、一定期間(米国は生涯、フランスは15年、ドイツは10年)の贈与は、相続税と税負担が同じになっています。
一方、日本では、相続と贈与で税負担が異なっております。甘利氏は「時間をかけて国際標準にそろえていく」としており、来年から贈与税が実質的に廃止される可能性は高くないと考えます。とはいえ、自民党税制調査会が制度改正に向けて着手したことは間違いないので、早晩、贈与税は実質的に廃止になることが予想されます。そこで、贈与をご計画なら、是非お早目に着手してください。
2021.08.16 サクセスサポートニュース(令和3年8月)