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SS NEWS(令和3年11月)~認知症になったら…~


【 やはり預金を引き出せないんですか・・・ 】

 「やはり預金を引き出せないんですか・・・」
 東京都内の金融機関で50代の男性は困惑していた。80代の父は認知症と診断され介護施設に入居していたところ持病の悪化で入院し、男性は入院費用の支払いのため父親名義の定期預金を取り崩そうと相談に訪れていた。
 「認知症ではご本人の意思確認ができないのでお支払いできません」
 金融機関は、家族による預金の横領を防ぐため支払いに応じてくれません。
 男性は「自分の預金を取り崩して入院費用を払うしかないか・・・」と悩んでいます。
 この事例のように、本人のためでもお金が使えず、預金の凍結状態となるケースが増加しています。


【 65歳以上の5人に1人! 】

 政府の統計によると2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人(約730万人)が認知症を発症するとの推計です。ご存知の通り、一度発症すると回復させるのは難しい病気です。
 年齢が上がるにつれ認知症の有病率は上昇し、80歳~84歳では22%、85歳から89歳は41%、90歳から94歳は61%、95歳を超えると80%にもなります。
 一方、認知症の人が保有する金融資産は2030年度で215兆円に達する見込みで、認知症の人が保有する住宅は2021年度で221万戸にもなります。(いずれも第一生命経済研究所調べ)。
 認知症発症後の平均余命は5年~12年だそうです。その間、預金も不動産も凍結状態のままになってしまいます。


【 経営者が認知症になってしまったら・・・ 】

 経営者が認知症になってしまうと、会社経営に深刻なダメージを与えます。
 そのため、認知症への事前の備えが重要です。
 中小企業経営者が認知症になった場合のリスクは次の通りです。

1.契約行為ができない
 認知症により「意思能力がない」と認められると契約行為は認められず契約は無効になってしまう可能性があります。

2.銀行取引
 運転資金の融資が受けられなくなり、事業継続に大きなリスクとなります

3.会社運営や事業承継
 社長が認知症になってしまうと、後継者がいる場合は準備不十分なまま事業承継となってしまい、後継者が決まってなければ、会社存続が危ぶまれます。
 また、法律的には、社長が認知症になってしまうと議決権が行使できません。株主総会での決議が定足数に満たず、議決が困難になる可能性があります。

4.社長個人の資産
 冒頭の事例のように預貯金を引き出せなくなり、まとまった資金が必要な場合(例えば、認知症に伴う介護施設等の入居費用など)に資金に窮する可能性があります。また、不動産の処分はもとより、自社株の贈与などもできなくなります。


【 賃貸不動産を保有している方が認知症になってしまったら・・・ 】

 例えば、台風や地震による被害のため賃貸不動産の大規模修繕を行う場合、業者との契約や銀行からの借入ができず原状回復が棚上げになると、借主から訴えられるリスクが懸念されます。


【 成年後見制度はあるけれど・・・ 】

 認知症対策の一つに「成年後見制度」がありますが、2020年12月時点の利用者は23万人で、認知症患者数730万人の数パーセントとほとんど利用されていないのが現状です。
 成年後見制度は「原則として財産を維持する。預金引出しや不動産売却などは本人のためになる時だけ」という制約があります。そのため、例えば、相続対策、あるいは家族のために必要な取引であってもその実現には困難を極めます。
 また、手続きの煩雑さ、後見人への報酬の支払いなどがネックとなり敬遠されているようです。


【 事前の備えは『家族信託』! 】

 資産家や経営者が行う認知症対策として最近注目されているのが家族信託(民事信託とも呼ばれます)です。活用事例は次の通りです。

 ① 自宅の売却を長男に信託しておいたので、認知症を発症し介護施設入居後に空き家になった自宅を、長男が売却することができた。
 ② 預金を妻に信託しておいたので、寝たきりとなって介護施設に入居する費用300万円を妻が銀行で引き出すことができた。
 ③ 不動産の管理を孫に信託しておいたので、賃貸不動産の台風被害による修繕を孫が迅速に進めてくれて入居者にも感謝された。
 ④ 上場株式を長男に信託しておいたので、認知症を発症した時、介護のための自宅の大規模工事費用を長男が上場株式を売却してくれたことで工面できた。
 
 個別の事情にあわせ様々な対応が可能ですので、詳細は担当者にお尋ねください。


【 認知症の兆候は? 予防方法は? 】

 日本認知症学会の調査によるとコロナ禍による認知症患者の症状悪化が認められるとのことです。そして、認知症は次の兆候が顕著になるそうです。
 
 ① 約束をよく忘れるようになった。
 ② 趣味への興味がなくなった。
 ③ 服装に関心がなくなった。
 ④ 家族や周囲の人との会話が少なくなった。

 また、次の3つの行動を心掛けると、認知症の予防になるそうです。

 ① 「 知 的 活 動 」・・・頭を使って指を動かす。
 ② 「コミュニケーション」・・・人との会話は脳に刺激を与え認知症のリスクを遠ざける。
 ③ 「  運   動  」・・・運動することで神経細胞が活性化され脳の血流がよくなり認知症予防に効果がある。

2021.11.10 サクセスサポートニュース(令和3年11月)