SS NEWS(令和2年4月)~コロナ・ショックによる経営悪化に対処するための資金繰りや業績悪化回避~
新型コロナウイルスの世界的危機は、観光業、航空業、飲食業等を直撃するだけでなく、あらゆる業種の経営に深刻な影響を与えています。貴社におかれましても何らかの影響を受けられていらっしゃることと思います。
政府が必死に金融支援策等を打ち出していますが、経営財務のサービスを提供すべき当社としましては、コロナ・ショックによる経営悪化に対処するため、資金繰りや業績悪化回避に役立つと思われる情報を以下にまとめました。
なお、本ニュースは令和2年3月31日現在の情報であり日々アップデートされていること、および、紙面の都合で簡略に記載していることから、詳細は当社担当者へお問い合わせ頂ければ幸いでございます。
◆ Ⅰ. 資金調達
1.融資・保証制度
ここでは、新型コロナ対策融資・保証として、公的金融機関(日本政策金融公庫、商工中金)による融資と信用保証協会の保証・市区町村による特別融資をご説明します。
(1)日本政策金融公庫による融資制度
① 新型コロナウイルス感染症特別貸付(融資上限額6,000万円)
・売上高減少要件 …… 5%以上
・金利 …… 3,000万円を上限に、当初3年間は「基準金利-0.9%」
・特別利子補給 …… あり
・市区町村の認定書 …… 不要
② 生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付(融資上限額6,000万円)
(旅館業・飲食店などの生活衛生関係の事業限定)
・売上高減少要件 …… 5%以上
・金利 …… 3,000万円を上限に、当初3年間は「基準金利-0.9%」
・特別利子補給 …… あり
・市区町村の認定書 …… 不要
③ 新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付(融資上限額1,000万円)
(旅館業・飲食店などの生活衛生関係の事業限定)
・売上高減少要件 …… 10%以上
・金利 …… 基準金利(一部例外あり)
・特別利子補給 …… あり
・市区町村の認定書 …… 不要
④ セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)(融資上限額4,800万円)
・売上高減少要件 …… なし
・金利 …… 基準金利
・特別利子補給 …… なし
・市区町村の認定書 …… 不要
※ 特別利子補給制度
・売上高減少要件 …… 小規模事業者15%以上、中小企業20%以上
・利子補給期間 …… 当初3年間(基準金利-0.9%)
(2)信用保証制度(民間金融機関の融資に信用保証協会が保証)
① セーフティネット保証4号
・売上高減少要件 …… 20%以上
・特別利子補給 …… なし
・市区町村の認定書 …… 必要
・保証枠 …… 債務の100%
② セーフティネット保証5号(業種指定あり)
・売上高減少要件 …… 5%以上
・特別利子補給 …… なし
・市区町村の認定書 …… 必要
・保証枠 …… 債務の80%
③ 危機関連保証
・売上高減少要件 …… 15%以上
・特別利子補給 …… なし
・市区町村の認定書 …… 必要
・保証枠 …… 債務の80%
(3)商工中金による融資制度
① 新型コロナウイルス感染症特別貸付
・売上高減少要件 …… 5%以上
・金利 …… 商工中金所定の金利
・特別利子補給 …… あり
・市区町村の認定書 …… 不要
(4)市区町村による特別融資
各市区町村の窓口にご確認ください
2.助成金
(1)新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例(新型コロナ特例)
・新型コロナウイルスの影響により売上高が5%以上減少
・雇用維持のために一時的な休業等(休業・教育訓練・出向)を実施
・助成率は最大で90%(1人1日あたり8,330円が上限)
・休業等(休業・教育訓練・出向)の計画届を令和2年6月30日までに提出
(助成対象となる教育訓練の要件が定められておりますのでご注意ください)
(2)小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金
・新型コロナウイルス対応のため臨時休業等をした小学校等に通う子供の世話を行うこととなった保護者に対し有給休暇を取得させた事業者
(3)時間外労働改善助成金
① テレワークコース
・新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入する中小企業(試行的に導入している事業主も対象となります)
・助成対象の取組
・テレワーク用通信機器(※)の導入・運用
・就業規則、労使協定等の作成、変更
・労務管理担当者に対する研修 等
※ パソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象となりません
・補助率:50%(1企業当たりの上限額:100万円)
② 職場意識改善特例コース
・新型コロナウイルス感染症対策として、特別休暇の規定を新たに整備すること
・支給対象となる取組(いずれか1つ以上実施)
A.労働者に対する研修
B.外部専門家(社会保険労務士など) によるコンサルティング
C.就業規則等の作成、変更
D.労務管理用ソフトウェアの導入、更新
E.テレワーク用通信機器の導入、更新 等
※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。
3.生命保険会社による契約者貸付制度
生命保険会社には契約者貸付制度(解約返戻金の範囲で貸付けを受けられる制度)があります。多くの生命保険会社において新型コロナウイルス対応で貸付金利が0%となっております。法人契約の取扱いがある生命保険会社全32社のうち24社が金利0%です。代理店や保険会社にお申し出いただき、手続きをとれば1週間以内に借りられます。
4.中小企業倒産防止共済の貸付制度
中小企業倒産防止共済制度に加入して1年以上の中小企業は、不幸にして取引先が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍の範囲内(最高8千万円)で売掛金等の貸倒れ金額を限度に貸付けが受けられます(無利息)。
また、取引先事業者が倒産していなくても、臨時に事業資金を必要とする場合に、解約手当金の95%を上限として借入れできる制度(一時貸付制度)があります。
さらに、納付期間が40か月以上の場合は、解約により積み立てた掛金の全額(減額なし)の払い戻しを受けることができ、資金調達と同時に赤字回避(払戻金は雑収入)にも役立ちます。
5.ファクタリングの利用
売掛債権を売却して資金化する方法です。 証券会社や金融機関の子会社等が行っている金融サービスです。
債務者の信用度によってリスク評価しますので、一般的に金利が高目になります。
6.法人税の繰戻し還付制度
中小企業が前事業年度に納めた法人税の還付を受けられる制度です。
法人税(地方法人税含む)だけが対象で、都道府県民税・事業税は対象外です。(消費税も対象外)
◆ Ⅱ.資金支出の削減
1.生命保険料の払い込み延期
生命保険料の払い込みが困難な場合で、無断で一定期間払い込みを怠ると解約と見なされ、これまで払い込んだ保険料が解約損失になってしまいます。ご注意ください。
一方、生命保険会社に申し出て払い込みを猶予してもらうことができます(法人契約を取扱う生命保険会社全32社の全てで可能)。
猶予期間は最長6ヵ月ですので、それより長期にわたり払い込みを止めたい場合は、これまでの払込済保険料を基に計算した「払い済保険契約」に契約変更することができます。
2.倒産防止共済掛金の払い込み中断
この掛け金は、経営の状況に応じて払込金の増額や減額ができるのがポイントです。
しばらく払い込みを中止し、業績好転後に払い込みを復活することができます。
3.借入金返済額の削減
資金繰りが苦しくても、金融機関への相談なしで借入金の返済を怠るのは避けるべきです。
証書借入の金銭消費貸借契約には、通常、「1回たりとも返済を怠った場合は期限の利益を失う(残金を一括返済をする)」旨の約定があり、一時に全額弁済を要求されるおそれがあります。そのため、毎月の返済額を減らした借り換えを金融機関に早めに申込む等によって返済遅延を避けてください。
4.企業の納税と社会保険料の猶予制度の利用
最近の日本経済新聞によると、政府は新型コロナ・ショックによる資金繰り難に直面する企業を支援するため法人税・消費税や社会保険料の支払猶予の特例制度を「3月決算法人(5月納税)」に間に合うように創設するとのことです。適用になる収入減等の基準は未定ですが、支払猶予の期間は1年間で、延滞税は取らないようです。
5.第三者への地代や家賃の支払い遅延リスクに注意
資金繰りは苦しくても、地代の支払い遅延は借地契約解除の原因になり借地権が消滅するおそれがあります。また、家賃の支払い遅延は立ち退き要求の原因になりますので、ご注意下さい。地主や家主との賃貸借契約書で遅延許容期間を確認しておいて下さい。
◆ Ⅲ.経費の削減の注意点
諸経費等の削減につきましては、各会社の業種等個別状況によりますので、社長ご自身で経費項目ごとにご検討頂き、また、当社担当者にご相談ください。
ここでは、税法上や法律上注意して頂きたい事項を2点お知らせいたします。
1.役員報酬の減額に注意
資金繰りが苦しく役員報酬を支払えない場合がありますが、税法上、一度決めた役員の月額報酬を変更すると、最も少ない月額を超える役員報酬額が費用に認められなくなり法人税が増加しますので、ご注意ください。
諸事情により減額したい場合は、当初決めた月額報酬(いわゆる額面額)は変更せずに、支払った金額との差額を役員借入金として処理してください。
なお、経営の状況が著しく悪化したなど特別な事由が生じた場合に限って減額できる税法上の特例がありますが、厳しい適用条件がありますのでお早目に当社担当者にご相談ください。
2.役員所有不動産の地代・家賃の減額に注意
地代や家賃の減額については、役員報酬のような法人税法上の否認規定はありませんが、著しい低額あるいは無償にしますと、相続税の計算上、使用貸借とされて賃貸用不動産に認められている評価減が適用されないことになりますので、ご注意ください。
2020.04.05 サクセスサポートニュース(令和2年4月)