SS NEWS(令和3年7月)~電子帳簿保存法について~
「電子帳簿保存法」とは国税関係帳簿書類の保存を紙文書でなく、電子データでの保存を認めた法律であり1998年に制定されました。
電子データを基軸とすることで、紙文書の印刷や保管などの手間の削減による「経理業務の効率化」、紙や印刷にかかる「コストの削減」、オフィスの省スペース化や環境問題に配慮した「ペーパーレス化への推進」の実現が期待されています。
しかし、これまでは適用要件が多く厳しいこともあり、本格導入には消極的な企業がほとんどでした。そうしたこともあり、徐々に要件が緩和された改正が繰り返されてきましたが、令和3年の税制改正により大幅な要件緩和がなされました。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は大きく3種類に区分されており、それぞれの改正事項をまとめました。
◆(区分①)電子帳簿等保存 ◆
会計ソフトで作成した総勘定元帳などの帳簿、電子的に作成された税務申告書をデータのまま保存。
・事前に税務署長の承認が必要でしたが、事前承認は不要とされました。
・電子帳簿が「優良」「その他」に区分され、優良である届出をしている場合には申告漏れがあった際の過少申告加算税が5%に軽減されます。
・「その他」は優良でなくとも最低限、正規の簿記の原則(複式簿記)で記録されていれば電磁記録による保存が可能となりました。
◆(区分②)スキャナ保存 ◆
紙ベースで受領した請求書、領収証等をスキャニングし画像データで保存。保存したデータに電子的な時刻証明書であるタイムスタンプを付与しデータ作成日時を確定させます。
・税務署の事前承認制度が廃止されました。
・タイムスタンプの付与期間が3日から2か月以内に緩和されました。またクラウドソフトに保存する場合には、タイムスタンプの省略が可能となりました。
・他方、スキャナ保存データに不正があった場合には、重加算税が10%加重されます。
◆(区分③)電子取引 ◆
ネットや電子メールで取引した場合に電子的に授受した取引情報をデータで保存。
・タイムスタンプ付与期間は区分②と同様に変更されました。
・電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、出力書面等紙ベースの保存は認められなくなり、電子データでの保存が義務化されました。
・電磁的記録に隠蔽、仮装があった場合には、重加算税が10%加重されます。
以上のように電子帳簿保存は要件が緩和され導入の加速が期待されます。
タイムスタンプの料金も1回あたり10円程度で普及が進むにつれ値下がりしていくでしょう。
ただし今回改正がされていない要件に「真実性の要件」があります。それは記録の訂正・削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除のできないシステムで取引情報の授受及び保存を行う。という点です。
このことは、区分①では会計処理をさかのぼって訂正・削除できないことであり、訂正・削除時に仕訳を起こして行うということを意味します。区分②③では、証憑書類等の差替えが必要な場合はその事実を明らかにしておくということです。
この要件は極めて重要であり、導入の際には綿密な打ち合わせが必要と思われます。また詳細については国税局HPをご参照下さい。
2021.07.08 サクセスサポートニュース(令和3年7月)