SS NEWS(令和6年2月)~医療費控除・交際費~
2月16日から所得税確定申告がスタートしますので、今月号では【医療費控除】【国税庁公表の誤りやすい事例】を取り上げます。
また、令和6年度税制改正から、会社の経理に影響がある【交際費】を取り上げます。
なお、税制改正項目で最も関心が高いと思われる【定額減税】は、次回に詳しく取り上げる予定です。
===医療費控除===
確定申告の中で最も申告が多いのが「医療費控除」ですので、「いまさら」の感はありますが解説いたします。十分ご存じの方も「おさらい」の意味でご一読していただき、控除漏れがないようご注意ください。また、「今年は手遅れ」という方は、来年の申告に向けて今からご準備をお願いいたします。
【控除される金額】
次の算式で計算した金額が「所得」から控除されます。(「税額」からの控除ではありません。)
1年間に実際に支払った医療費の金額 - 保険金等で補填される金額(※) - 10万円
※例えば、保険金等の補填額 5万円・補填の対象となる支払医療費が 3 万円の場合は、3万円(5万円ではありません)となります。
〇 「1年間に実際に支払った金額」とは?
・「1年間」は、1月1日から12月31日の暦年の1年間です
・「実際に支払った金額」なので、「治療を受けたが年末時点で未払い」の分は対象外です。
・確定申告する本人のみならず、生計一親族(同居するご家族)分が対象になります。
〇 「保険金等で補填される金額」とは?
・生命保険会社の入院・手術給付金等、健康保険等から給付される高額療養費等が該当します。
〇 具体的にいくら還付されるの?
・例えば、「1年間に支払った医療費が 20万円、保険金等で補填される金額が 5万円(保険対象の支払医療費は 5万円以上と仮定)、所得税+住民税の税率が 30%」のケースで試算すると…
・控除される金額=20万円-5万円-10万円=5万円
・還付される所得税・住民税=5万円(控除される金額)×30%=1万5千円
【医療費控除の対象となるもの】
〇 病院・クリニック等での診察費・治療費・入院費 … 差額ベッド代は「医師の指示に基づくもの」以外は対象外です。
〇 歯の治療費 … 審美目的の歯科矯正は対象外です。
〇 治療のためのリハビリ費用
〇 介護保険の対象となる介護費用
〇 医薬品 … 医師の処方箋によるものに加え、ドラッグストアで購入した風邪薬等の医薬品も対象になります。
〇 通院費用 … 原則として、電車・バス等の「公共交通機関」に限り対象になります。公共交通機関が使用できない特別な事情がある場合のみ、タクシー代は認められます。「特別な事情」の詳細は弊社担当者にお尋ねください。なお、駐車場代、ガソリン代は対象となりません。
〇 人間ドックの費用 … 健康診断等で重大な疾病等が発見され、健康診断等がその治療に先立って行われる診察と認められるケースのみ対象となります。
〇 医療費控除の申告には、「領収書」「健保組合等が発行する医療費のお知らせ」の保管が必要です。
※以下は医療費控除の対象になりま「せん」。
・予防接種費用
・サプリメント購入費
・補聴器、眼鏡(治療目的の購入でない場合)
・自分の都合で利用した病室の差額ベッド代
・疲れを癒したり、体調を整えるためのマッサージ費用
===国税庁公表の誤りやすい事例(所得税確定申告)===
国税庁が公表している「所得税確定申告の誤りやすい事例」のうち、重要なものを抜粋してお伝えします。
〇 副収入の申告漏れ
副収入等(例えば YouTube・アフィリエイト・メルカリ等の収入)によって年間 20万円を超える利益を得ている場合、申告する必要があります。
〇 一時所得の申告漏れ
生命保険会社等から「満期金」や「一時金」を受け取った方は、その収入が一時所得として申告が必要となる場合があります。生命保険会社等から送付された書類をご確認ください。
〇 医療費控除の計算誤り
薬局で購入した【日用品】については、医療費控除の対象になりません。
また高額療養費、高額介護合算療養費、出産育児一時金や生命保険会社・損害保険会社からの入院給付金などで補填される金額は、(その給付の目的となった医療費の金額を限度として)支払った医療費の額から差し引きます。
〇 寄附金控除の適用漏れ(ふるさと納税)
確定申告を行う場合には、【ふるさと納税ワンストップ特例(確定申告省略制度)】を申請している方であっても、令和 5 年中に支払った「全てのふるさと納税の金額」を寄附金控除額の計算に含める必要があります。(医療費控除だけの申告も確定申告書に「ふるさと納税」の記載・計算が必要です)
今年の申告で漏れがないか、ご確認をお願いいたします。
===交際費の改正(令和6年度税制改正)===
【5,000 円から 10,000 円に引き上げ】
「5,000 円以下の接待飲食費は交際費でなく会議費で処理してよい」というルールが改正となり、金額が「5,000 円」から「10,000 円」に引き上げられます。令和6年4月1日以後に「支出」されるものから新ルールが適用されます。(決算期に関わらず4月1日からのスタートです)
【接待飲食費の 5,000 円ルールとは?】
改正後は「社外の人との接待飲食費は、1人あたりの金額が 10,000 円以下の場合は、一定の条件のもと、税金計算上は交際費にならない」という内容になります。このルールを重要ポイントごとに分解してご説明します。(金額以外は改正なしです。)
(1)10,000 円は税込金額?税抜金額?
貴社の決算書が「税抜表示」なら接待飲食費も税抜き額で判断。「税込表示」なら接待飲食費も税込み額で判断となります。また、1人あたりの金額が 10,000 円を超える場合は、その全額が対象外になります。1人あたりの金額から 10,000 円を控除するという方式ではありませんのでご注意ください。(1人あたり 12,000 円の場合に、12,000-10,000=2,000 円という計算はしません)
(2)社外の人とは?
社外の人とは「取引先」(得意先・仕入先など)の人のことです。したがって、社内の役員もしくは従業員のみの飲食費(いわゆる「社内飲食費」)はこのルールの対象外です。
(3)接待飲食費とは?
飲食費のみが対象です。贈答品等はこのルールの対象外となります。例えば、取引先の業務の遂行や行事の開催に際して弁当の差入を行う「弁当代」も飲食費に含まれます。一方、飲食物の詰め合わせを贈答品として渡すケースは対象外です。
(4)一定の条件とは?
飲食代の領収書の保存に加え、飲食等に参加した者の「氏名」「人数」を記録し保存することが必要となります(保存がない場合は適用不可です)。飲食店の領収書の余白もしくは裏面に「参加者氏名」「参加人数」を記入する方法が最も簡便でお勧めです。
2024.2.8 サクセスサポートニュース(令和6年2月)
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