SS NEWS(令和4年2月)~賃上げ促進税制の「上乗せ項目」とは?~
★★【 賃上げ促進税制の「上乗せ項目」とは? 】★★
昨年12月に発表された令和4年度税制改正のうち、特に【賃上げ促進税制】は新聞やテレビでも大きく取り上げられました。
賃上げ促進税制は、「雇用者全体の給与等の支給額」が前年度比で1.5%以上増加すると「増加額の15%」を減税、2.5%以上増加の場合は「増加額の30%」を減税という仕組みです。
この税制は、平成25年度に創設され現在も続いている【所得拡大促進税制】が衣替えしたものです。
そして、平成25年創設時には「上乗せ」がありませんでしたが、現在は「上乗せ」される特典があります。
特典を受けられる項目は【教育訓練費】です。
「上乗せ」と申しますのは、教育訓練費が前年度比で10%以上増加すると「増加額の10%」が前述の下線の減税額に「上乗せ」されます。
今回の「ニュース」でご一緒に考えたいのは、【政府はなぜ「教育訓練費」を上乗せ項目として特典を与えるのか?】という点です。
★★【 日本人は勤勉で勉強好きか? 】★★
「教育訓練費」に上乗せ項目として特典を与えるのは、「諸外国に比べて日本の社会人は勉強しない」、さらに、「日本企業は人材育成投資のGDP比率が低い(ドイツ1.56%、アメリカ1.41%に対し日本はわずか0.23%)」などのリサーチがあるからだと考えられます。
「人材育成を行わないと日本が世界から取り残される」との危機感から上乗せ特典としたと言われております。
平成31年の文化庁の調査では【社会人の50%以上が1か月に1冊も読書をしない】。
平成28年の総務省の調査では【社会人の「学習・自己啓発・訓練」の時間は1日あたり平均6分】という衝撃的な数字がでています。
【コロナ禍でますます勉強しなくなった】と、さらに追い打ちをかけるリサーチが、令和3年7月にリクルートワークス研究所から発表されました。
日本では、自主的に学ぶ社会人が少ない上、企業の人材育成「投資」も「費用」とみなされコストカットの対象になってきました。
中小企業では教育費を捻出することもままなりません。
ひと昔前は「日本人は勤勉で勉強好き」というイメージがありましたが、残念ながら今はその面影はありません。
皆様の会社はいかがでしょうか?
昨年1年間で人材育成にいくら投資されましたか? 時間にすると何時間になりますか?
★★【 サービスやモノをよりよくするには? 】★★
サービス業であれば【ヒト】のスキルが提供する価値に直結します。
モノづくり業では【作り手(ヒト)】により品質が変わることがあります。
中小企業は、サービスや製品の品質を「技術革新」によって引き上げるのはハードルが高いです。
一方、ヒトの「スキルアップ」、「モチベーションアップ」によって品質を上げることは十分に可能ですし、全社一丸となり取り組む価値があると考えます。
そして、今こそ取り組む【チャンス】です。
というのは、前段でご紹介した各種リサーチの通り、多くの企業は人材育成に取り組んでおりません。
コロナ禍でさらに顕著になりました。
だからこそ、「少しの努力」で同業他社を上回ることができます!
そして、社員の自主性に任せても難しいことは各種リサーチから一目瞭然なので、会社として取り組む必要があります。
★★【 何から取り組むか? 】★★
具体的にどんな教育研修に取り組むか? の答えは一つではないと思います。
会社の状況等により、取り組む内容や手段が異なると考えるからです。
例えば、いわゆる「ヒヤリ・ハット」の原因を分析して対策を議論する。
効率化のため各自が工夫しているアイデアを共有する。
不良品が生じるパターンを分析してロスを減らすノウハウを共有する。
技術向上に直結する研修。
取引先との面談場面のロールプレイング研修(模擬場面を設定し参加者が実演して周囲から指導を受ける研修。通称「ロープレ」。接客場面や営業場面など幅広いシーンで活用できる研修スタイル)。
などなど、このほかにも様々なやり方があると思います。
★★【 熱意あふれて仕事をしている社員は何%いますか? 】★★
米国のギャラップ社が平成29年に公表した、【日本は、熱意あふれて仕事をしている社員の割合が6%(米国は32%)で、調査対象139カ国中132位】という結果が日本経済新聞で大きく取り上げられ、各界に衝撃を与えました。
さらに、このリサーチによると【周囲に不満をまき散らしている無気力な社員の割合は24%】【やる気のない社員は70%】に達したとのこと。
日本経済新聞では、「問題なのは、不満をまき散らしたり無気力な社員は、【周囲に悪影響を及ぼす】という点です。
製品の不良、クレーム、取引先の喪失など会社にとって何か問題が起こる場合、多かれ少なかれ、そういう社員が関与しています」との見解が紹介されております。
もし皆様の会社で、熱意がない、不満をまき散らす、無気力な社員がいるとしたら、技術研修やロープレ研修の前に、その社員(あるいはそれ以外の社員を含め)のやる気を引き出す対策が必要かもしれません。
具体的には、例えば、日本の大手企業でも取り入れられている【1on1ミーティング(ワンオンワンミーティング)】です。
1on1ミーティングの目的は「教育」や「指導」ではありません。
社長(あるいは上司)と社員の【心理的距離】を縮めることです。
「日頃、どんなことを頑張っているか?」
「(公私を含め)気がかりなことや悩みはないか?」
を聞くことで、社員の考え方が理解でき、話をすることで社員本人も自分の考えを整理でき、自分の「好き・得意」を再認識できる機会となります。(話す割合は「社長:社員=2:8」が目安)
そして、「1on1」を何回か繰り返すことで、仕事への向き合い方に変化がでて、熱意やモチベーションもアップしてくることでしょう。
「1on1」は中小企業では社長が行うことがお勧めです。
なぜなら、「何を言うか」は大切ですが、「誰が言うか」はさらに重要だからです。
ところで、皆様は、社員・部下から【熱意あふれて仕事をしている】と映っていますか?
どんな教育研修費が「上乗せ」対象となるのかなどについては、担当者にお尋ねください。
2022.2.10 サクセスサポートニュース(令和4年2月)