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SS NEWS(令和2年8月)~「ONE TEAM」の実現~

◆ ONE TEAM ◆

 コロナショックで業績が急降下する中、中小企業の経営者からお聞きするのは、どうやったら「全社一丸経営」ができるのか、という悩みや、昨年の流行語大賞に選ばれた「ONE TEAM」をぜひ我が社でも、という想いです。ところで、ラグビー日本代表メンバーが試合の中で「ONE TEAM」を感じるのはどんな場面でしょうか?
 それは、苦しい時です。自陣のゴールライン近くに相手のスクラムで少しずつ押し込まれて踏ん張っている時、本当にキツイ時にこそこの言葉が生きてきます。まさに今、あるいはこれから、中小企業は「踏ん張る時、本当にキツイ時」を迎えます。だからこそ、経営者が自社の社員に「ONE TEAM」を求めるのだと思います。

◆ プロジェクト「アリストテレス」 ◆

 ラグビー日本代表はMVPを取るようなスター選手がいるわけでなくチームの全員が活躍しました。スター選手がいないチームが、スター選手がいるチームに勝つ。これを経営に当てはめると、普通の社員だけのチームが、優秀な社員がいる会社に勝つ、です。スポーツならともかく、経営でそんなことが可能なのか?その実証実験に取り組んだ会社があります。Googleです。

 約4年の歳月と数百万ドルを費やして実施されたのが、プロジェクト「アリストテレス」。このプロジェクトの目的は「生産性の高いチームの条件は何か?」の答えを見つけ出すことです。Googleには数百のチームがありますが、生産性の高いチームもあれば、低いチームもあります。このプロジェクトで生産性の高いチームの共通点から生産性向上のカギを見つけ、2015年に「チームを成功へと導く5つの鍵」として公表しました。
 5つの鍵のうち、最も上位にくる概念が「心理的安全性」です。心理的安全性とは、自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露しても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じることができる場合で、メンバー全員が失敗を恐れずに発言・行動できるため、有意義な議論や積極的な協力が日常的に行われチームの生産性が向上する、と説明されます。
 ただし、「みんな仲良しのぬるま湯の関係」という意味ではありません。Googleの発見で重要なのは、チームの生産性向上を実現するには「高い能力を有したメンバーを集める」ことよりも「チームがどのように協力しているか」で大切であるという点です。この考え方は世界に広まり、日本でも多くの大手企業が心理的安全性の確保に取り組んでいます。

◆ 集合知性 ◆

 Googleが突き止めた「能力の高いメンバーを集めることよりもチームがどのように協力しているかが重要」という概念は脳科学的にも立証されております。米国カーネギーメロン大学ウーリー博士の研究をご紹介します。IQテスト等の脳機能テストにより3種類のグループを作りました。
「1人だけ天才的な人がいるグループ(天才グループ)」
「全員の知性が高いグループ(高知性グループ)」
「個々の知性は平均的だが集合知性が高いグループ」(集合知性とは、グループメンバーがお互いに理解し尊重しあう中で優れた結果を出せる状態)
 グループ間の競争の結果、圧倒的大差で好成績をあげたのは「集合知性のグループ」でした。そして、女性が含まれているグループは男性だけのグループより集団知性が高く、グループの中で一人だけ話をし過ぎる人がいると集合知性は低くなることも判明しました。人々が心を一つにして同じ目的に向かっていくとき、集団としての知性が高まり、集合知性によって平凡な知性の人たちのグループが天才知性を持つ人よりもはるかに高いパフォーマンスを発揮できるのです。

◆ いま必要なのはマネジメントでなくリーダーシップ ◆

 「集合知性」が発揮されるには、Googleのいう「心理的安全性」が保たれた環境が必要です。そして「心理的安全性」は、心理学者アルフレッド・アドラーによると「横の関係」が不可欠です。上から目線でなく、かつ、下手に出るのでもなく、あくまで横の関係です。京セラ稲盛和夫さんの言われる「パートナーシップという横の関係」です。「褒める・叱る」とは異なります。というのはアドラーによると、褒めるのも叱るのも「上から目線」です。褒めるだけ、叱るだけは、どちらも弊害があります。

 ビジネスでは「マネジメント」という言葉が浸透していますが、「心理的安全性」により「集合知性」を発揮するために必要なのは、経営者と従業員の間の、「マネジメント」という「縦の関係」でなく、「リーダーシップ」という「横の関係」です。叱るだけはダメ、褒めるだけもダメ。では横の関係を築くにはいったいどうすればよいのか?必要なのは、「リーダー」のコミュニケーションスキルです。
 経営者は発信する力が強いので、従業員の言うことを聞くよりも自分の言いたいことを伝える場面が多いと思います。しかし、日ごろから経営者が従業員の話を一生懸命に聞いていると、部下のモチベーションが高くなることが脳科学の実験で分かっています。従業員の話を聞くときに大切なことは「相手に関心を向ける」のではなく「相手の関心に関心を向ける」という聴き方です。一般的には「相手に関心を向ける」聴き方が推奨されますが、その聴き方だと多くの人は判断・評価・分析的に聴いてしまい、できていない部分に意識が向いてしまいます。そうではなく、本人になりきり「場面や臨場感がイメージできるくらい相手の関心に寄り添う」のが「相手の関心に関心を向ける」こと、そして、それが「横の関係」なのです。

 優秀な人材は大手企業に就職して中小企業では採用できない、という話を聞きます。「ONE TEAM」「心理的安全性」「集合知性」でお話してきた通り、ひとりひとりの能力が高くなくとも、チーム全体のパフォーマンスを高くすることができます。そして、脳科学の研究によると、チームのパフォーマンスを高くできるのは経営者(リーダー)のコミュニケーションなのです。いままさに求められている「全社一丸経営」「ONE TEAM」の実現は、経営者・リーダーの行動が重要だといえます。

2020.08.07 サクセスサポートニュース(令和2年8月)