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SS NEWS(令和3年10月)~在庫の実地棚卸と評価について~

 決算の重要な手続きに「在庫の実地棚卸と評価」があります。
 決算在庫が正確であるかどうかということは、売上高や仕入高の正確性とともに、税務調査の際に必ず調査対象とされる手続です。
 しかし、実地棚卸や評価(単価の付け方)を拝見しますと、長年にわたり習慣的に行われている実地棚卸や評価の方法に、このままでは税務調査の際、在庫の金額の誤りや改善を指摘される恐れがあるような手続きが見受けられます。
 そこで今回は、より適正な決算在庫の計上を行って頂くために必要と思われる実地棚卸の方法と評価の方法について説明することにしました。

 

◆ 1 実地棚卸の計画準備

(1)実地棚卸日は月末より翌日(1日)の方が良い。

 決算期の末日とは、厳密にいうと「月末の24時」です。
 したがって、月末に実地棚卸を行っている場合、棚卸作業の最中に棚卸済みの在庫品目の出入荷があったとき、棚卸後取引を理由に売上高や仕入高を翌期に計上することはできません。
 売上高と仕入高は当期に計上し、棚卸済みの在庫数量を減算又は加算するという修正作業を行う必要があります。
 したがって、実地棚卸中の出入荷を確実に禁止できれば月末の実地棚卸で結構ですが、月末の実地棚卸では棚卸作業中の入出荷を徹底できない恐れがある場合は、実務上、入出荷を禁止しやすい決算期末日の翌月1日(最初の営業日)を実地棚卸日とし早朝から開始することが望ましいのです。

(2)棚卸の範囲や保管場所別の担当者等を事前に決定し周知させる。

① 商製品や材料は当然に対象になりますが、貯蔵品や消耗品として棚卸を要する品目が曖昧の場合があり、あらかじめ棚卸品目の範囲を決めておく必要があります。

② 保管場所の平面図を作成して、保管場所別の実地棚卸責任者や担当者(注)を決めて、責任を明確にしておくとともに、実地棚卸日の前日までに整理整頓させておくことが重要です。この整理整頓には、散在している在庫を整理整頓するだけでなく、長期滞留品や型崩れ・変色等不良品を把握し記録することが重要な作業です。
(注)責任者や担当者を決定する場合、経営の内部管理のためには、日常、在庫の出入庫や管理に従事している者よりも、従事していない人を担当者にしたほうが望ましいという考え方があります。在庫数だけでなく、在庫の長期滞留の状況、型崩れ、変色等の情報を客観的に把握するためです。 

③ 外注加工業者、仕入先、販売委託先等の社外在庫先のリストを作成し、社外在庫証明書等を依頼する担当者を決めておきます。

(3)実地棚卸の具体的な方法を決め、周知させる。

 実地棚卸の開始時間、具体的な実地棚卸の手続き、リスト方式によるかタグ方式によるか、必要なリスト(棚卸表)やタグ(棚卸票)の用意、実際のカウント方法や棚卸票の記入の方法のほか、万一、実地棚卸中に入出荷があった場合の取扱い等も具体的に決めておく必要があります。

 

◆ 2 実地棚卸の実施

(1)実地棚卸はこのように実施する。

① 在庫に棚札を付して出入庫の都度記入する在庫管理を採用している場合は、棚札に記載されている在庫残数と実在数が一致しているかどうか確認します。
 棚札による管理を行っていない場合は、通常、リスト方式かタグ方式が採用されています。
 リスト方式は、帳簿棚卸を行っている場合の残数を記載したリストを用いる場合のほか、帳簿棚卸や棚札による管理も行っていない場合でも、一保管場所内に同一品目が原則として一か所に置いてある場合に適した方法です。
 棚卸作業はあらかじめ作成された棚卸品目のみを記載したリスト(棚卸表)に実在数を記入しながら進める方法です。
 タグ方式は、品目数が多数で、同一品目が必ずしも一か所に置かれていると限らない場合に適した方法で、一品目一枚のタグ(棚卸票)(注)に数量を記入して、現品に付しながら作業を進めて、最終段階でタグを取り集めて棚卸集計表に記入する方法です。
(注)通常、ハガキ程度の大きさで、品目名や品番等と実在数が記入できれば様式はフリーです。

② 実地棚卸において最も重要なことは、すべての在庫が漏れなくカウントされリスト又はタグに記載されたかです。
 リスト方式の場合はリストに記載されていない新しい品目がないか?タグ方式の場合はタグを回収する前にタグが付されていない在庫がないか?確認する必要があります。

③ 棚卸担当者は単に数量をカウントするだけでなく、型崩れや変色等不良品がある場合は、その旨を棚卸表等に記入する必要があります。

(2)棚卸集計表はこのように作成する。

 棚札による管理を行っている場合は、棚札を基に棚卸集計表を作成します。
 リスト方式の場合は、通常、実在数の記入欄の次に単価の記入欄と金額の記入欄がありますので、後日、単価と金額を記入すれば、そのまま棚卸集計表になります。
 したがって、実地棚卸担当者と棚卸集計表の作成者が異なる場合は、筆跡が異なることになります。
 タグ方式の場合は、同一品目のタグを集めて棚卸集計表を作成します。

 

◆ 3 評価単価の決め方

(1)在庫の評価金額はこのような単価で計算する。

① 在庫の単価は、税法上、別段の棚卸方法による旨の届け出がない限り、最終仕入原価法による単価で評価することに決められています。
 (ただし、輸入品については関税や運賃等付帯費用がありますので、仕入れ単価に加算する必要があります。)
 最終仕入原価法とは、通常、同一品目の在庫に異なる複数以上の単価の在庫がありますが、仕入れ単価の異なるごとに計算することは不可能なので、「当該品目の決算期末に最も近い時に仕入れた単価(最終の仕入れ単価)で当該品目のすべての在庫を評価する方法」です。

② 多品種の販売業においては、個々の品種ごとの数量や単価から計算することが困難な場合は、利益率がおおむね同じ品種グループごとに利益率を計算して、この利益率に基づいて計算した売価に対する原価率を用いて評価する方法があります。
 これを売価還元法といい、採用したいときは届け出る必要があります。

③ 製造業における製品や仕掛品は、本来、原価計算による単価を計算する必要があります。
 しかし、原価計算を行わない中小企業においては、その製造原価を適正に計算することが困難であり、製造工程に応じて製品売価の何割として評価する事例が多いことから、税法上、売価還元法に該当するものとして、これが認められています。
 
(2)不良在庫がある場合は、評価減をすることができる。

以下のような在庫については、評価減(単価を下げて評価)することができます。
① 災害により著しく損傷した在庫
② 著しく陳腐化した在庫
 例えば、季節商品で売れ残ったため今後通常の価額販売できないことが既往の実績等で明らかな在庫や、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発表され通常の方法で販売できない在庫
③ 破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができない在庫

 

◆ 4 棚卸関係資料の保管の重要性

 以上で説明したようにリストやタグ等の実地棚卸で作成された記録(これを原始記録といいます。)に基づいて棚卸集計表が作成されますが、決算に用いる在庫の金額が棚卸集計表の合計金額を記載するため、棚卸集計表だけ保存してリストやタグ等の原始記録は廃棄してしまう例が見受けられます。
 税務調査においては、棚卸集計表が適正に作成されているか確かめるためにリストやタグ等の原始記録の提出を求められますので、これらを保管するようご留意願います。
 なお、カウント違い等による修正があり、棚卸集計表等が汚損したとして清書なさる事例があります。
 しかし、税務調査官は、あまりに奇麗すぎる清書よりも、作業中の記入や修正はそのまま残されている方が原始記録としての信憑性は高い、と判断すると思いますので、ご留意ください。
 評価減をした在庫については、期末前後の実際の処分価額や実地棚卸の際の担当者の評価減理由の記載、在庫の写真等、税務調査の際に提示できる資料を保存することをお勧めします。

 

◆ 5 決算期末前後の売上取引や仕入取引の取扱い

 決算期末の在庫とは、厳密に考えると月末日の24時現在の在庫です。
 したがって、24時前の入出荷が決算に計上すべき売上高や仕入高であり、同時刻後の入出荷は翌期の売上高や仕入高です。
 後日、売上高や仕入高を売上伝票控や仕入先納品書の日付のみで処理すると、実際の入出荷日と異なる場合があることに留意する必要があります。
 売上伝票を発行しながら出荷できなかったり、仕入先は期末前に出荷したが実際の入荷日は1日や2日であったりするからです。
 したがって、期末日前後の売上伝票や仕入納品書に実際の出入荷日を記入することが必要です。
 朱色の日付入りゴム印等を用いると、出入荷日が鮮明に記録されます。 

2021.10.12 サクセスサポートニュース(令和3年10月)